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 整備士からみた自動車エンジンの変遷と将来
 自動車のあゆみ  自動車の原型は荷車や、コーチと呼ばれた馬車から発展して来たもので、自動車の発達、進化はエンジンの進化と言っても過言ではありませんでした。 しかしながら今後エンジンは次第に自動車の一部の主要部品としての位置づけに変わって行くようです。 
その経過的な技術として現在はハイブリットシステムが脚光を浴びてはいますが、近い将来燃料電池の技術が大成され高性能モーターが搭載されれば、ガソリンやディーゼルの内燃機関は次第に過去の遺物として蒸気機関の様な道を歩む事になって行く運命にあるようです。 
今まで先人が血の滲むような努力の結果生み出したエンジンの歴史について簡単に掲載いたします。 目次の項目をクリックしていただくとリンク先に移動いたします。
    

目次 1章 自動車のあゆみ 概要

2章 ガソリン機関の歴史 開発初期
進んでいた航空機のエンジン
デリケートな自動車用エンジン

3章 ディーゼル機関の歴史 概要
過酷な産業用・舶用エンジン
Uボートのおかげ?
無駄ではなかった 戦艦「大和」の建造
大型エンジンから小型エンジン化の流れ
「自貫性」の重要度
ガソリンより有望なディーゼル機関

4章 エンジン世代の変遷 概要
 ・発明当初~1980年頃       (動力性能を追求し、発展した期間)
 ・1970年~1990年頃         (環境への影響を認識し始めた期間)
 ・1990年~現在~そして未来へ  (環境と資源保護との両立へ)
 ・コモンレール式ディーゼルエンジン (電子式燃料噴射式ディーゼルエンジン)
 ・ハイブリット車の可能性と特徴
 ・ハイブリットシステムの限界と欠点
 ・燃料電池自動車へ

5章 エネルギーと地球温暖化 脱、化石燃料化に向けた自動車業界の取組み方
 
  ガソリン機関の歴史  ・開発初期  
航空機用エンジン
 18世紀後半から19世紀、初頭にかけて欧州で多くの原型が開発されています。 現在の内燃機関の原型は、英国のW.L.Wright (1893年) が考案して以降様々な開発が進められ、1876年Nicolas A .Otto(独)が Beau DE Rochas の考え出した4サイクルガス機関の原理に基づいて製作しています。
  当初の機関は圧縮比が2.5程度で熱効率は10~12%程度だったようです。 馬や水車、後には蒸気機関等の動力しかなかった当時では現在の核エネルギーのような画期的な発明であった事でしょう。  産業革命の中人々はより軽量で、簡単に大きな動力源を必要とするようになり第1次世界大戦により不幸にも更に飛躍的に技術的に進歩する事になります。 1883年 G.Daimler(独) がガソリン機関をほぼ現在のエンジンの原型という程度に大成させました。 1900年頃には、K.Benz(独) も高速機関の開発を進めています。

その後ガソリン機関は様々な新機構の発明や、改良を重ね現在に至っていますが 点火プラグにより発火、燃焼させる基本的なシステムは20世紀初頭に完成されたといっても良いようです。
 
 ・進んでいた航空機のエンジン (戦争がエンジンを進化させた)
  ディーゼル機関より圧縮比が低い分エンジン各部の強度が小さくて済む為に、 馬力あたりの重量が小さくコストのかけれる航空機に向いています。 エンジンについては、 自動車よりも戦闘用のプロペラ航空機搭載用のガソリン機関の方がはるかに進んでいていました。 ロールスロイス、メルセデスベンツ、フィアットなどの自動車エンジンはこの技術を継承しています。
  私が以前勤務させて頂いていた、 日産プリンスの主要車種である スカイラインは、 零戦のエンジン 「榮」 を造った 旧中島飛行機の技術者達が心血を注いで 設計、 製作したもので、 国内のレースで 50連勝と言う快挙を成し遂げています。

  初期の飛行機は 燃料を気化し空気と混合するのに キャブレータ が使用されていましたが、 地球の重力で 飛行機が 傾斜、 旋回、上昇、 急降下することで 液面が傾き、 ほぼ水平な状態でしか使用できないので、 戦闘機では背面飛行や急降下、 急上昇でも失火しない様にキャブレータを使わない 燃料噴射システムの開発が不可欠でした。 (日本の旧海軍戦闘機でも採用していました)  高高度でも高出力の出せる過給機等も 第2次大戦当時にはすでに実戦配備されています。 私達が最新と思っていた、 多くの新機構は航空機では古くから既に使われていたもです。

  太平洋戦争でもし旧日本軍が開発中であった 空気の薄い高高度を飛行できる過給機(スーパーチェージャー)付きの迎撃機をもっと早い時期に実用化し、 実戦配備していたら、B29による大都市空襲も原爆投下もなく歴史も少し変わっていたかも知れません。
   
 ・デリケートな自動車用エンジン

 
  自動車用のエンジンは、専門的な知識や技術が無くても、 一般のユーザーが使える様に、 無負荷時から全負荷時に至るまで快適性、 静粛性、 加速性能が要求され、 特有の非常にシビアな性能が要求されます。 航空機や産業用のエンジンは、回転数の変化が少なく自動車用の機関とは発想が大きく異なり、 また別の意味で、 自動車用機関には高度なノウハウが必要になります。 技術の開発、 進歩は地味なものですが、私達の生活にとって大きな係わりをもっています。
  
 ディーゼル機関の歴史
 1898年 Rudolf Diesel (独)は空気のみをシリンダに吸込み、その温度がいかなる燃料の発火点よりも高くなるまで圧縮し、その中に燃料を高圧の空気により霧状にして燃焼させるディーゼルエンジンの原型を開発しています。 その後燃焼室に直接燃料を高圧(200~1000気圧)で噴射する(無気噴射)方式が開発され現在では産業用、舶用、重機用、トラック等の自動車用に使用されております。

  ディーゼルエンジンの発達の歴史もやはり軍事用によるものでした。 船舶の動力は第2次世界大戦終了までは大出力の出せる重油ボイラーで高温高圧の蒸気を使った高価な蒸気タービン船が主流でした。 戦闘用の艦艇はもちろん、タンカーや貨物船、輸送船にいたるまで蒸気タービンや、機関車に使われていた蒸気エンジンが使用され、当時の日本では、軍閥の係争もありましたが、技術的に内燃機関は出力を大きく出来なかった事や、信頼性、耐久力の低かった為に余り使われていませんでした。

  
 ・過酷な産業用・舶用エンジン
  自動車の場合では最高出力で連続使用する事はほとんどありませんが、産業用の発電機や船舶に使用されるエンジンは、自動車と全く使用条件が異なり、常に90~100%の出力で長時間、連続して運転される為に、耐久力、信頼性、整備性が重要になります。漁船や戦闘用の船舶では100%を超える出力で連続運転される為に特に耐久力が重要です。 急に出力を増減速すると、各部の急な温度変化による熱応力の為に、機関が破壊される場合もあります。
   私が大学時代の乗船実習で最初に乗った練習船は 「大成丸」 と言う旧式の蒸気タービン船でした。 速度も12ノット程度しか出なかった記憶があります。 ボイラーで過熱蒸気を作り船を動かします。 主機のタービン以外の装置はまるで機関車のような人間味のある蒸気式の往復動の機械が所狭しと配置されており、出航する8時間以上前から準備が必要で、入港後も4時間以上冷機作業が必要でした。 
近代的な船での実習も役立ちますが、「大成丸」のお陰で本当に貴重な勉強をさせてもらいました。
  
 ・Uボートのおかげ? (大和魂では造れなかったディーゼルエンジン)
新型の日本潜水艦   戦前、旧ドイツ帝国では、ディーゼルエンジンは、安全性や信頼性、始動・停止の機敏な事で、大戦中Uボートにその動力源として使用され、 技術的にも高度に発達していました。 今注目されているハイブリットシステムは、 80年以上前から潜水艦の潜航中の推進システムとして既に採用されいたのです。 日本海軍も潜水艦は地理的な条件もあって大型の航続距離のある潜水艦を保有させていました。

  浮上中や、シュノーケリング中(後述)はエンジンで発電機を回し発電します。 発電した電気を沢山のバッテリーに貯めておきます。潜行するとエンジンを停止させて、バッテリーの電気を使ってモーターを回しプロペラを動かします。 当時はバッテリー(蓄電池)の性能も今より悪く、 現在の20ノット以上で比較的長時間潜行できる潜水艦の性能は出せず、 別名「可潜艦」とも言われ、 少しだけは潜ることの出来る船だったのです。

  当時の潜水艦の大きさや性能としては、 日本は世界の最高水準にはありましたが、 優秀なディーゼルエンジンを製造する技術がなかった為に、 残念な事に初期型は危険なガソリンを燃料に使用していました。 
  その後に燃料に重油を使ったディーゼルエンジンが搭載されますが、工作精度や材質が悪く、 耐久力が低かった為に、 航海中、2基あるエンジンの内、大抵何らかの原因で片方のエンジンはオーバーホールして修理していたようです。 旧日本海軍の機関士、機関部員達は非常に勤勉で、 優秀だったのです。 これは現在の海上自衛隊にも脈々と引き継がれています。

  潜水艦の長時間の隠密行動時には、シュノーケリング航行と言う、 海面下10メートル位の潜望鏡深度で、 シュノーケルという吸気パイプを海上に少しだけ突き出し、 そこから空気を取り入れてエンジンを駆動していました。  閉鎖された換気の悪い艦内で、気化しやすいガソリンは非常に危険です。 ディーゼルエンジンで燃料として重油が使われる様になるまで、航海中、 乗組員は船外に出て喫煙したそうです。 
 海軍廠(旧日本)も必死にディーゼルエンジンの開発を進めましたがドイツの潜水艦の様な高性能、 信頼性、 耐久力は、 中々思うようには出来なかったようです。 連合国側が優勢になって、 情勢が厳しくなった中、 同盟国ドイツのUボートを遠く、 喜望峰を経て日本まで回航して譲受けたり、 必死の覚悟で当時の三菱の技術者をドイツ本国へ行かせたりして、 最高の軍事秘密であった当時のディーゼルエンジンの製造技術を旧ドイツより教えてもらいましたが、 海軍廠の技師達は、 精密機械工作技術や溶接技術のあまりの技術力の遅れに愕然としたそうです。

  
 ・無駄ではなかった 戦艦「大和」の建造  今も受け継がれている精神
  日本は技能的には昔から現在に至るまで非常に優れていて、 刀剣や軍艦、 大砲等の単品生産は得意でしたが、 現在の工業の基本である品質管理、 工程管理、 寸法公差・・・・ 等の意識や考え方が欧米諸国と比較して、 工業生産する為の下請け、 町工場のレベルまでことごとく遅れていた為に、 当時の日本ではせっかくドイツから譲り受けた現物や設計図を参考にしても作れなかったようです。 戦艦「大和」 1隻は造れても優秀なエンジンの大量生産は出来なかったのです。

  「大和」造船については、 海軍廠も規格化・標準化の遅れを認識していて、 大変な苦労をして大きな改革を行ったようです。そのお陰で戦後日本の造船界はその技術を基に、 世界に冠たる造船国としての地位を確立して行きました。   旧ドイツでは最盛期には2~3日に1隻のペースで大量造船していた潜水艦が当時の日本技術と工業力ではどうしても造れなかったのです。

  ディーゼルエンジンは軽油や重油を燃料ポンプで非常な高圧に加圧し、 さらにそれを、 霧状に燃焼室へ瞬時に噴射する為、 複雑な構造のポンプや噴射ノズルにミクロン単位の加工技術が必要です。  当時の日本は大きな軍事工場と言っても、ピストンやベアリング、リングやバルブ等の仕上げは、 神業と言うべき高度に熟練した職人がまさに手作りで一品生産で造り、材料や工作機械の精度の悪さをまさに「大和魂」で克服しようとしていました。 同じ型式のエンジンでも別の船のエンジンの部品とは互換性が余り無く、 故障やメンテナンス時の部品補給等は苦労していたようです。 今では当たり前の 「工業標準規格」、 「互換性」 と言う概念が当時の日本は遅れていたようです。 

  ドイツやアメリカはすでに未経験者や女性までもが近代的な工場で精度の高い工作機械を使って、 品質の高い材料で部品を大量生産していました。 そこには、 生産性における何十年の考え方の遅れがあったのです。 近代的な工業生産をする為には、 基礎工学、 材料の品質、 性能は勿論の事、 加工する室内や加工部材の温度管理・工作機械の加工精度工場そのものの近代化、 更には、 技術者や作業員の能力、 考え方まで変えて行かなければなりませんでした。 
    太平洋戦争の敗因は技術面から見れば、まさにそこにあったといえるのではないでしょうか。
  
自衛隊護衛艦
 ・大型エンジンから小型エンジン化の流れ
  戦後、大型の4サイクルよりも理論的には2倍の出力が得られる ピストンの直径が1メートルを超える巨大な2サイクルディーゼル機関が、高価でデリケートな蒸気タービン船に変わって時代の主流になりました。  (一部の特殊船、大型商船や軍艦などは小型で大出力が出せ、短時間で最大出力の出るガスタービンをもっぱら採用しています。原子力空母や、原子力潜水艦等は、基本的には蒸気タービン船であり、 重油ボイラで蒸気を作る代わりに原子炉で発生するエネルギ熱を基に、蒸気を発生させます。)

  しかしながら大型内燃機関機関はメンテナンスに高度な技術や知識、手順が必要であり、 熱応力を抑えるために使用前後の準備等に長時間必要な事、 人件費がかかる事、 製造コスト削減の観点からも、 現在では特殊な船舶以外は、 比較的小型の高過給多気筒4サイクルエンジンが時代の主流になっています。 
 
 「自貫性」の重要度
  昔から船舶には「自貫性」 と言う言葉があり、一旦出航したら殆んどの故障や保守手入れは本船内でやり抜くと言う、自己貫徹性が要求されていました。 以前の船には大抵、機関室の中に「工作室」があり、旋盤などの工作機械、溶接機、予備のピストンやバルブ等のスペアー部品等が配置され、普段は航海中に機関部員がさまざまな整備作業や故障修理を実施していました。
 
   しかし、最近の考え方は本船での修理は極力避けて、故障があっても何とか入港し、港や修理船が来て修理するように変わってきています。 その代わり過去の経験を取り入れた定期的な保守手入れや、スケジュール化されたメンテナンス方法などは非常に緻密で、自動車の保守手入れについても見習うべきものが多くあります。

 
 ・ガソリンより有望なディーゼル機関
  マスコミ等では公害の元凶のように言われ、Noxや有害微粒子等で嫌がられているディーゼルエンジンですが、 今ではシステム全体としての熱効率が50%を超える物も多くあり、ガソリン機関とは比べ物にならない程、 経済的です。 後述の電子制御式の噴射方式を用いたエンジンが更に発展すれば、 当面の目標である燃料電池の完成まで、 環境への配慮、静粛性、 高出力化なども更に進み、 おそらく乗用車においても、 ディーゼル機関の方が、 ガソリンエンジンよりも近い将来的には、 有望であると考えられています。 新型ディーゼルエンジンを搭載したハイブリット車では楽にリッター当り50km以上は達成出来るはずで、 早急に開発が待たれます。
 
 
 エンジン世代の変遷 

概要

 ガソリンエンジンの基本は2サイクル、4サイクルを問わず良好な圧縮、 燃料混合、 点火に尽きますが、 これは最初に発明された当初から現在の最新型のエンジンに至るまで何ら変わっていません。

  100PS/㍑を超える高出力エンジンが当たり前の様に発売されています。 ターボチャージャ付きのエンジンでは、 過給機と言う圧縮機で大気からの吸入空気を圧縮します。 圧縮すると空気の温度が上がります。 すると混合気が発火しやすくなり、早期着火と言う異常燃焼(以下、ノッキングと言う)が発生します。 それを防止する為やより多くの空気を燃焼室に充填させる目的で、インタークーラと呼ばれる冷却装置で圧縮された空気を冷却したり、 圧縮比を7~8まで下げたりします。(圧縮比は高いほど熱効率が良い) それでもノッキングするのでノックセンサーと呼ばれる聴診器で音を聞きながら、ノッキングが発生しなくギリギリまで点火時期をコンピュータで遅角制御させています。 その結果、確かにエンジンの出力は増えますが、熱効率が悪くなります。 素晴らしい機構なのですが、大きい目で見ればこれは技術的には決して進歩とは言えないものがあります。
   
  厳しい規制をクリアしたトヨタや日産の新しいエンジンでもやはり、 電子制御式燃料噴射方式を使った
コモンレール式の過給機付きのディーゼルエンジンです。 燃焼温度が高いほど窒素酸化物が発生し易くなります。 このタイプは圧縮比を低くする事で最高燃焼温度、圧力(Pmax)を下げ、窒素酸化物を低減しています。 圧縮比を下げると熱効率が低下し、結果的に出力が落ちる(燃費も悪くなる)ため、過給機を付けて出力不足を補っている訳です。 非常に細かく噴射時期や噴射量を電子的に瞬時に制御するためにエンジン音も静かで良く走ります。 残念な事にやはりこのタイプもまだ燃費を犠牲にしています。 せっかく電子式の制御を採用した画期的なシステムなのですから、圧縮比を下げない良いエンジンが出来るはずです。 

  ようやく、平成22年になって日本政府も
新型の乗用車用ディーゼルエンジンを新車に搭載させる事を認可しました。
これは、前年にドイツのメルセデス社が新型ディーゼルエンジンをベンツ乗用車に搭載したからです。  非常に清浄な排気ガスを排出します。 ハイブリッド車よりも低いコストで販売されるでしょうし、 次世代の動力源が開発されるまではこれらのディーゼルエンジンも主流の一つになるでしょう。  

  昔に既に有った技術を新しい技術の様に売り出すのではなく、残り少ない化石燃料を大切に節約して私達の子孫に継承できるような方法や、装置、技術の開発が待たれます。  自動車のエンジンの開発には多くの技術者がまさに血の滲む努力をしています。 その結果、様々な変遷を経て現在に至っているのです。 では、エンジンが発明されてから何が変わってきたのでしょうか。   世代毎にその変遷を辿って見ることに致します。
 
 
  発明当初~1980年頃 (動力性能を追求し、発展した期間)
  乗用車のガソリンエンジンにとって、この期間はもっぱらエンジンの高出力化についての研究や開発が行われた時期でした。 確かに多くの改良が加えられて進化して来ましたが高出力化と言う技術的な観点からは、すでに完成されたと言っても良いのではないでしょうか。

  4サイクルガソリンエンジンはクランクが2回転する間に 吸気ー圧縮ー爆発ー排気の4つの行程を繰り返します。キャブレータ方式にしろ初期の燃料噴射方式にしろこの4つの行程の間に負荷に応じた燃料と空気を何グラムシリンダーに入れるかと言うものです。 圧縮行程に入った時にはすでに燃焼に必要な空気と、燃料は適当な割合で燃焼室内に存在しています。 つまり、非常に高度な技術は取り入れてはいるのですが、空燃費の制御と言う観点から見れば、クランクが720度回転する間に何グラムの燃料を燃焼させるのかと言う、大雑把な制御方式で、現在に至るまでこの方式が用いられていました。

 最近の環境問題を考えると上記のエンジン燃焼制御方式では、冷間時、加減速時、高負荷時等にどうしても限界がありました。
 
  1970年~1990年頃 (環境への影響を認識し始めた期間)
  そこで考え出されたのが、電子制御燃料噴射装置を使用して各種センサーによる情報を基に、最適な噴射量や燃焼条件を制御するシステムです。 
  これには、燃焼した後の排気ガスの燃焼状態をセンサーで検出し、適性な空燃費より検出値がずれると、補正して常に理想の燃焼状態になるように制御する、フィードバック制御方式が採用されました。 また排気ガス中の窒素酸化物と一酸化炭素、炭化水素とを触媒の作用で無毒な窒素ガス、二酸化炭素水とに変えるシステム、 更に高温状態で発生しやすい窒素酸化物を低減させる為、排気ガス(酸素が少ないので燃えにくくなる)を不活性ガスとして再びエンジンの新気から戻し入れ、燃焼時の最高燃焼温度を下げるシステム(EGR) が開発されました。
   燃費や経済性、排気ガス規制とエンジンの高出力化とは当時は相反する要素と考えられていました。 技術の進歩は素晴らしいもので、見事に克服した様に思われました。 しかしながら、自動車が増え環境与える影響が更に深刻になって来た為に、更なる改善が求められる様になりました。  初期のエンジンはいかにその性能を高めるかを主眼としているのに対して、この第2世代と言うべきエンジンは、環境に配慮しつつ、その性能を維持させるのかが開発のポイントでした。
 
  1990年~現在~そして未来へ (環境と資源保護との両立へ)
  コンピューター等が発達し電子装置の性能が以前に比べて格段に進歩したお陰でエンジンの燃焼時の制御方式も格段に向上してきました。 クランク軸の1度単位の回転を検出して瞬時に制御出来る様になった為に排出ガスや燃費、走行性能、快適性等が格段に向上したのです。 点火時期、時間の制御は勿論、非常な高圧で、ピストンがどの位置に来たら何ミリ秒(1/1000秒)燃料をシリンダー内に噴射し、あと何ミリピストンが上がったらあと何ミリ秒噴射すると言う非常に細かい制御を行っています。

  この電子式直噴ガソリンエンジン(GDI)は今まで限界とされていた理論空燃費より極めて薄い領域で燃焼が可能になったので、低排出ガス・省燃費と高出力化の相反すると考えられていた性能を備えています。

 
 ・コモンレール式ディーゼルエンジン(電子式燃料噴射式ディーゼルエンジン)
  概要でも少し触れましたが、ディーゼルエンジンにおいてもこの電子燃料噴射式が採用されています。 点火前、点火の前後、そして燃焼中に非常に細かく正確に燃料噴射の量や、時間を制御するので、燃焼室内での燃焼状態は、まるで天然ガスを燃焼させているような「青色の炎」です。 問題になっている高負荷時に燃料の空気不足によってできる黒煙PMとも言われる(粒子状物質)は殆んど発生しなくなりました。 また、一気に燃料を噴射しないで、 数回に分けて噴射燃焼させる為に燃焼時の最高温度・最高圧力が抑えられるためにディーゼルエンジン特有の騒音も極めて低く抑えられています。 ディーゼルエンジンの独特の排気ガスの臭いも殆んど無いと言っても良いでしょう。
 
 ・ハイブリット車の可能性と特徴

トヨタ自動車より抜粋
  ガソリン、ディーゼルエンジンを問わず上記のシステムはアイドリング時からフルスロットルの最高負荷時まで、安定した性能を発揮するように設計・開発しなければならず、非常に高度な技術が必要です。 前述の潜水艦の項目で述べました様に、最近はハイブリット自動車が脚光を浴びています。 ハイブリット車に使われるエンジンはエンジンのみのシステムに比べ、搭載されたエンジンの一番性能の良い領域だけを使えばいいわけで、トヨタのプリウスは、昔に考案された、通常のエンジンには相性が悪いのですが、狭い領域で非常に性能の良い、高膨張比(アトキンソンサイクル)機関を見事に実用化しています。 経済性を重視した自動車でエンジン排気量が小さいので、高速走行では限界があります。  最近発売された車種では、エンジンの排気量やモーター出力を増大させ、経済性を少し犠牲にして、走行性能を向上させた車種も出てきています。(これは、良く走ります)

    ハイブリット車のもう一つの特徴は回生ブレーキシステムです。これは制動時に従来のブレーキを使用しないで、駆動に使われているモーターを発電機として利用し、自動車の持つ速度エネルギーを再び、電気エネルギーとして回収させるシステムです。無駄な制動時のエネルギーロスを抑える役目があり、非常に良いシステムです。 通常では従来のブレーキシステムを殆んど使用しない為に、車検時などのメンテナンス費用でブレーキ廻りの出費がおさえられます。 10万㌔走ってもフロントのディスクパットは殆んど減りません。
 

 ・ハイブリットシステムの限界と欠点
  エンジン特性の悪い分は高圧バッテりからの電気でモータを回して補うので、走行性能も1500ccとは思えない2000ccクラスの加速が味わえます。市街地や普通の高速走行では、何ら問題は無いようでが、充電する余裕が無い程エンジン負荷が大きい高速度で連続して走行すれば、すぐにバッテリーの電気がなくなり、モーターからのアシストが得られない為に、エンジン本来の連続出力限界がハイブリット車性能の限界となり、高速で長時間の連続走行では、少々物足りない感じがします。
 
トヨタ自動車より抜粋

現在のエンジンのみで走る自動車に比べては経済的なシステムではありますが、

    ①燃料を燃焼させて、エンジンを動かす。       (高温の為窒素酸化物が発生する)

    ②機械エネルギーに変換し、走行し、発電機で発電する。(発電効率の改善が必要)

    ③発電した電気をバッテリーに貯める。        (充電効率の改善が必要)

、   ④バッテリーからの電気でモーターを動かす (エネルギー効率の高いモータの開発が必要)

    ⑤モーターを動かし機械的な動力を発生させ、自動車を走らせる。 

    ①~⑤のそれぞれの変換過程で発生する変換時ロスが多すぎ、機構が複雑で技術的に見れば完成された良いシステムとは言えません。 モーター駆動システムや 回生ブレーキシステムの利点、特徴をさらに開発を進め、それらの技術を継承した燃料電池システムが完成するまでの経過的な技術と見る方が良いのではないでしょうか。

 
 ・燃料電池自動車へ
  燃料電池方式は上記の内燃機関やハイブリットシステムと比較して
 
    ①燃料を酸化反応 (炎を出さないが、燃焼の一種) させ燃料電池ユニットより発電する。
      ・急激な燃焼を伴わない化学反応なので動作温度が低く窒素酸化物は発生しない
       ( 炭化水素系の燃料の場合では、勿論CO2は発生します。 )
      ・エンジンが無く騒音や変動トルクの発生源が無いので極めて静粛である
      ・理論的には内燃機関に比べ格段にエネルギー効率が良い 
 
    ②発電した電気を、走行の負荷に応じてモータを動かす電力と余剰の電気はバッテリに充電する。
      ・発電量を簡単に制御出来、常時発電するので、経済性の為に蓄電量が低下する毎に作動を繰り返す
       ハイブリット・システムと比較して高電圧バッテリ容量は小さく出来る

    ③加速時や登坂路等の大きい電力を必要とする時は、バッテリから電力で充分な加速性を得られる。
      ・高圧バッテリー・エンジン・変速装置等の重量を減らせるので、軽量かつコンパクトで自由度の高い
       設計が可能になります。

  ①~③の繰り返しで機構が非常にシンプルで変換ロスが少なく、構造が簡単でホイールや車軸に小型・高出力のモータを装着すれば、エンジンルームの無いコンパクトで居住性に優れた、現行のハイブリット車と比較して、格段にコストダウンが計られる可能性があります。

  今後、燃料電池の技術が完成されれば、内燃機関を使わない環境にやさしい自動車になって行くでしょう。 二酸化炭素(CO2)を全く発生しない水素ガスは、残念な事に石油燃料(炭化水素化合物)に比べて重量当りのエネルギーが小さいので、限られた燃料タンク容積しかな取れない自動車に採用するには、今の技術では現行車と同程度の走行距離を確保する為に、燃料タンクが大きくなりすぎて長時間の連続使用は出来ません。
 私も、大学時代に燃料電池について研究しましたが、当時(40年前)から指摘されていた薄膜の性能が困難で、大電流を流す電池が現在でもいまだに開発できない現状です。リチュームイオン電池は内部の液体が発火しやすく、高出力、高密度化すればするほど危険性が伴います。 
 比較的安全な固体電池の開発もすすんでおり、期待されています。  液体水素と超伝導磁石を使ったシステムも研究されています。  理論上は白灯油、軽油、重油などでも発電は可能で、現在研究開発が進んでいます。

  将来、この種の燃料電池の方向性は大切な化石燃料を使わず、太陽光や、地球内の熱エネルギー、原子力エネルギーで製造した水素か酸化しやすい金属等を燃料として使って行くと思われます。  
  何れにしましても近い将来、今までの内燃機関(エンジン)は必要なくなり、騒音や排気ガスを出さない安全なシステムとして燃料電池システムが広く使われて行く事を期待します。  
 
 エネルギーと地球温暖化  
 
CO2が温暖化の原因?

国際政治については、私自身は詳しく分りませんが、 京都議定書の内容の様な地球温暖化が果たして炭酸ガスによるものなのでしょうか?  各国や各団体、結社の思惑が石油や天然ガス等の化石燃料を国際政治の戦略手段として利用し、 炭酸ガス排出量までもが売買され、投機の対象になっております。 米国の国際的な経営者がアマゾンのジャングルをサトウキビ畑に開拓し、バイオエネルギーとしてアルコールを製造を始めたと新聞で報道されています。 空気や農産物までもが国際的な機関や大資本に支配されています。 ジャングル等の森林は炭酸ガスを吸収して、大量の酸素を大気中に放出する地域なのですが、ここを開発してバイオエネルギーの生産場所にすればその分だけ、 酸素を生産する場所が無くなる訳ですから、 決して地球にやさしいとは言えないのではないでしょうか。 森林だけが炭酸ガスを吸収するのではなく、海中植物プランクトンも膨大な量の炭酸ガスを吸収して酸素を作っています。
 化石燃料を使うのが環境には「悪」で、バイオ燃料を使うのは「善」とは一概には言えず、 一片の草も生えていない荒地や砂漠に農場を作るならともかく、広大なジャングルを破壊して、 酸素の放出量を減らしている現状を見れば議定書での、 バイオエネルギーの使用により、 炭酸ガス排出量の差し引きが 「ゼロ」 になると言う考え方は無理があるように思います。

マスコミの使命と責任
 マスコミでは地球の温暖化の主原因は炭酸ガスにあると断定していますが、 他の多くの文献では、 地球の長期の周期的な温度変化であり、最近の温暖化のような傾向はその変化の範囲内であるとも述べられております。 実際の温暖化(決して悪いことではない)すなわち地球生物にとって住み易い環境に保ってくれている主役は炭酸ガスではなく水蒸気と言う事実。  また、別の文献では空気中や海水中の炭酸ガスの割合が高くなると植物の光合成は活発化してより多くの酸素を排出する様になり、大気中の炭酸ガス濃度は全体としては安定する傾向が見られるそうです。 これら両論の文献の正当性の審議は別として、 マスコミが何故か全く一方的に片方の主張を取り上げ、 議論すら出来ないのが現状な様で、炭酸ガス原因説論者側に都合の良い 北極や、 各地の氷河が崩壊している過激な映像を毎日のようにテレビで放送しています。 南極大陸の周辺部の氷河は溶けている部分もありますが、大陸内部では実は氷河の厚みが増している事実をマスコミは何故か報道しません。

進まない原子力化
 国は勿論、大学、研究所、企業でも温暖化について反論すると徹底的に非難されるのか、それを恐れてなのか沈黙しています。  マスコミが温暖化について、 今後も本気で取り上げて行くなら、 何故、将来の現実的なエネルギー源はクリーンな原子力発電が良いのか、環境問題を取上げるなら公正で客観的な立場での報道を期待します。 もし今、化石燃料による発電を中止し、その分を原子力でまかなったら炭酸ガスの排出量は半分以下にする事ができるはずです。 ラジウム温泉の放射線は体に良くて、比べようも無いくらい低い量の原子力発電所の放射線漏れを大騒ぎして、 国民に恐怖感を与える報道はおかしいと思います。 マスコミ関連の方は他人からの情報を鵜呑みするのではなく、もっと客観的な独自の視点で多方面から情報収集し、公平に私たちに正しい報道を行って欲しいと思います。 何か目に見えない大きな力で押さえつけられていると思われても仕方ないのではないでしょうか?  報道や言論の自由はあるのでしょうか。 一方、 原子力発電に関連されている方々は、 原子力が、もっと信頼され、安心して私たちの暮らしの中に溶け込める様になっていく様にその必要性を説明する努力をして頂きたいし、 その責任や使命が有ると思います。

子孫に残すべき大切な化石燃料
 残念な事に、原子力開発を政治が利用して、石油価格を政略的に高騰させています。 実際はダブついている石油が何故こんなに値上がりしているのでしょうか。 近い将来、発展中の中国やアジア諸国の石油消費量が大幅に増加するでしょうが、 温暖化問題や石油価格の高騰を利用して原子力開発を正当化させ、 世論を容認の方向に操作しているのは事実です。  化石燃料は今後、子孫に残さなければならない大切な限りある本当に大切な資源です。 石油や石炭などの化石燃料は薬品や、新素材の開発・生産に向けられるべきものです。 空気や水と同じく投機や一国の利益のために利用するものでは無い筈です。 全排出量の14%を超える炭酸ガスを排出する自動車と関連した私たちにとっても、 この大切な化石燃料を、運動エネルギーを得る目的だけに使用するのは、 早急に止めなければならない事です。 その意味でも自動車関連産業を挙げて動力源となるシステムの開発を進め、 もっとグローバルな、永い将来に亘っての視野で、 この事は考えて行くべきではないでしょうか。
 

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